講演会
第84回精神文化講演会を振返って
・・・・国家国民が拠って立つ価値観が崩壊しつつある。従来の日本人の生き方に警鐘を鳴らし、明るい希望と生きる勇気を与える哲学的人間観を考える!!
去る平成21年4月19日(日)、東京赤坂の日本都市センターホテル大会議室において、第84回の精神文化 講演会が盛大に開催されました。初夏を思わせる好天に恵まれ、多くの聴衆を集めて、昨年秋からの未曾有の世界的不況の中、日本の政治と日本人の生き方を問う意義深い講演会となりました。 多くの方々のご来聴を戴き厚く御礼申し上げます。
演題 : 「これでいいのか日本人」
読売新聞特別編集委員
橋本 五郎 先生
初めに、読売新聞特別編集委員の橋本五郎先生に「これでいいのか日本人」と題して講演を戴いた。先生は、政治畑を一貫して歩まれ、其の鋭い感性によって日本政治の裏表を斬ってこられた。先般の自民党総裁選の公開討論内容に言及され、それぞれの候補へ的確な質問を投げかけ、各々の候補の政治家としての資質分析から始まり、お話しに熱が入り、上着をとられて、自らの秋田県知事へ立候補断念のエピソードを交え、「人倫の大本は夫婦にあり」福沢諭吉の言葉を引用しながら、秋田の実家の模様、十四年前に83歳で亡くなられたお母さんの生活の在り様を淡々と話され、子を思う親の誠に触れ聴衆の涙を誘った。そして再び政治の話となり、宰相たる者如何なる姿勢が必要なのか、それを要約すれば、人の心の傷みを真に理解し、国家に対しての哲学が必要であり、人としての真心であると結論付け、日本政治、政治家に欠けているものは、本当に国家国民を大事にする心と、国を背負っているという気概であると説かれました。独り政治家だけではなく、人間として基本的な心の在り方であり、伝統的日本の心でもある。今、私達はこの心を失いつつあるといことです。政治家はウソつきだと揶揄されるようなことがあってはならないと思う。要は人としての誠、誠実さが問われているのではなかろうか。
演題:「東洋的な生き方-現代の不安をどう乗り越えるかー」
日本大学大学院教授
小坂 国継 先生
次に、日本大学大学院教授の小坂国継先生、三年ぶり二度目の登場。「東洋的な生きかた-現代の不安をどう乗り越えるかー」 と題して講演を戴いた。先生は、地球環境に言及され、このまま化石燃料を使い続け、経済的要求を自然に押し付ければ、温暖化により海面上昇や砂漠化が進み、自然から逆襲を受けると。西洋の自然観は、旧約聖書以来自然を支配するという人間中心主義であり、東洋の自然観は自然を神聖なものと捉え、一切衆生は自然と共にあると。中でも日本の自然に対する愛は世界に類例を見ないものであること、自然に計らいを加えないものであった。しかし、現在は世界で初めて公害問題を起こし、経済至上主義に負けてしまったと説かれました。一方、西洋人から観た日本人は美意識がするどく、道徳意識が高いことを実例を以って示され、当の日本人がすっかり変貌したことに気付いていないと説かれました。そもそも自然とは「自ずから然らしむ」ということで一切の計らいを無くしたところにあるもので、親鸞の言う 「自然法爾」や、道元や老荘の思想を挙げられ、欲望を追求することは限りが無く、虚しいとして、古今の聖賢は清貧に甘んじたことを取り上げ、身の丈にあった生活こそ幸福へ道であると説かれました。要約すれば現代の不安の原因は、近代に入り西洋流の合理主義、経済至上主義に追従し、私達日本人が古来より伝統的に培って来た「神と自然と人間の調和」の生活の在り方を閑却したところにあると言えるのではなかろうか。
■ 第84回精神文化講演会を振返って !!
両先生の講演から、日本人の本来の生き方、人間としての心の在り方を学ぶことができたと思う。現在の未曾有の経済危機や、将来への不安を克服するには、本会が目指す、日本国土に根を下ろした古くて新しい真理を学び、本来の日本人の生き方、東洋的な生き方を取り戻すことが緊要時であるということではなかろうか。要するに西洋人なることでもない、無色透明の人間になることでもない、日本の豊かな文化の母胎としての自然人となることなのであると考えます。