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第97回精神文化講演会を振り返って

足掛け三年に亘るコロナ禍、一段と緊迫の度を増す国際情勢の中で、去る令和4年4月17日(日)日本都市センターホテル6階大会議室において、日本大学危機管理学部教授 先崎彰容先生、国立環境研究所生物リスク評価研究室長 五箇公一先生をお招きして第97回精神文化講演会が開催されました。

先崎先生には今般のウクライナ危機と国際情勢を俯瞰した「国家の在り方」をめぐる講演を、五箇先生には生物多様性の視点から「自然界との調和」、持続可能な社会に向けての講演を頂きました。私達日本人が今後進むべき方向を見極める上で大きな示唆を与えるものとなりました。講演を頂戴した両先生と、聴講者の方々に改めて深く感謝を申し上げる次第です。

演題 :「令和日本のデザイン-国家の尊厳をめぐって-」
日本大学危機管理学部教授 先崎 彰容 先生

先崎先生は、本会の理念としてHPに掲げてあります 「本会は、伝統的日本の心を最も大切にし、日常生活に密着しながら、現代日本人の抱える不安と混乱を解消し、真の豊かな福祉社会の実現のため貢献いたします。」の文言を取り上げ、不安と混乱の時代をどう生き抜くかの処方箋と、考え方を提示された。

今般のウクライナ危機の誘因となったユーラシア主義から始まり、1917年のロシア革命以降の人工国家の成立から1990年のソ連邦の崩壊によってもたらされた欧米的世界秩序に対するロシア側の拒否反応の大きさがその原因であることを解説され、それを踏まえて日本の戦後体制は、77年間ひたすら経済至上主義による経済大国を目指してきたが、グローバル化が進み、大衆主義の台頭などにより、今般の危機のようなことが起こり、経済が破綻した場合に何も残らない。果たして日本は何を拠り所にして生き抜けばよいのかと問いかけ、大災害、感染症の脅威、戦争の危機などによって従来の考え方が通用しない、それぞれの国家体制を尊重しながら国際関係を構築する難しい時代に入ったとして、戦後体制の変革が必要であり、それに相応しい国家像の提案が急務であることを訴えられた。

演題 :「コロナ禍から学ぶ社会変容の重要性-生物多様性の観点から-」
国立環境研究所 五箇 公一 先生

次に五箇先生は、コロナ禍を踏まえ、茨城県つくば市からオンラインでの講演となりました。

生物多様性はなぜ大切なのか、我々、人間は生物多様性が生み出す様々な生態系機能を享受して生きており、人間は生物多様性に支えられて生きていることを指摘され、今や生息地の破壊、乱獲、科学物質による汚染、グローバル化による外来種の侵入、人間活動による気候変動・温暖化等々、際限のない人間活動の結果として生態系の破壊が進み、人間自身の生存を脅かす事態となっていることに警告を発せられ、それぞれの個別の要因について多くの映像を紹介しながら解説された。特に今般の新型コロナ・ウイルスの感染は、あまりにも強くなり過ぎた世界のつながりが、ウイルスの全地球的規模の感染を招いたとして、過度なグローバル・サプライチェーンがもたらした医療災害であるとして、これから私達が目指すべき社会、生物多様性の保全は人間社会の持続のための安全保障であると指摘され、人と自然の正しい共生の仕方を考えるべきであり、資源搾取型のグローバル経済からの脱却を訴えられた。

■ 講演を振り返って
 伝統的日本の心は、21世紀の世界に真の平和をもたらす第一の処方箋なのである。

両先生とも、国際秩序の混乱も生物界の混乱も全て人間がなせる業であり、過度のグローバル化が世界全体を脆弱なものにして調和を乱していると指摘された。

日本における戦後体制の間違いは、敗戦の虚脱感と国家観の喪失を物やお金で補おうとしたところにあると思われる。結果としてそれに成功し、経済大国になり国の誇りを取り戻したように見えたのである。しかし、戦後の現代日本人の抱える不安と混乱は一向に解消されず、その原因の一つに真の国家の尊厳を見失ったところにあると思われるのである。

現在世界の大国といわれる米国は二百年余、ロシアは三百年余、キリスト教に支えられた欧州においても離合集散を繰り返し、拠って立つ精神的基盤が常に変化してきた歴史の浅い人工国家なのであり、では日本国はといいますと、自覚的に二千数百年の時間をかけ風雪に耐え、歴史を刻んできた皇室を中心とした一大家族体系を形成し、揺るぎのない精神的基盤を持つ自然国家であることの違いなのです。その神聖さこそ日本国家の尊厳なのだと思います。

その内容は万物万象に想いを馳せ、生きとし生けるものを慈しみ、万物を在らしめる根源者を神として敬い、永遠を生きる魂の存在を自覚し、祖先を崇める敬神崇祖の心なのである。その心があればこそ平和を愛し、自然と調和し生きてきた国柄なのである。この思想こそが日本人が拠って立つ精神的基盤の中核を成すものなのである。

調和とは、支配や服従によるのではなく、個別の存在価値を尊重しそれを認め、その領域を侵さない多様性を認めて共存することにあるのです。それはちょうど個別の楽器が集まり、その能力を十全に発揮したところに素晴らしい調和(ハーモニー)が生まれる如く、世界においても個別の国家の尊厳と世界形成性を認め、その領域を侵すことなく共存するところに世界の調和が生まれ、平和が実現するのです。これは生物界に関わることにおいても同じことが言えるのです。

そこで現在、私達に求められるのは、ウクライナ危機に憂いを持ちながら、日本人に徹して生きることであり、日本の世界形成性の能力をいかんなく発揮して世界の平和に貢献することではないでしょうか。

今回の講演を通して、伝統的日本の心とは、万物万象に調和し、21世紀の世界を調和と平和に導く思想であり、第一の処方箋であることを気づかされたのである。

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