コラム
新型コロナウイルスの世界的感染拡大に思う
現下の新型コロナウイルスの世界的感染拡大に歯止めがかかっていない。
欧州では、これをウイルスとの戦争と捉えて、人々に厳しい制限を課している。世界一の医療体制を誇り自負している米国が、今や世界一の感染国となっている。そして、世界規模で政治や経済に大きな打撃を与え、人々の不安を助長している。3月のある新聞に「資本主義の限界が見えてきた」の由の記事が掲載されていた。その中で「・・・紙幣という紙ペラを大量に刷って、国債という紙ペラを大量に買っていることだ。実際には紙すら刷らず帳簿上の数字を変えているにすぎない。」と現在の経済の在り方を厳しく批判していた。
日本の現状は、1,100兆円の債務を抱え、その約半分の500兆円余りを日銀が買い取り、国家予算100兆円超えを組んで、毎年30兆円の赤字国債を発行している状況である。そして、今回のコロナ騒動に際して、更に財政出動を余儀なくされていることを考えると、国家の在り方、社会の在り方、私達の生き方を根本的に見直す必要があるのではなかろうか。
何度申し上げても足らないことであるが、自然界の調和を乱し、文明を築き今日の繁栄を齎したのは人類であり、今般の新型コロナウイルスの世界的拡散を齎したのも人類である。それは人間中心主義の行き着くところではなかろうか。21世紀に入って新しい世界を築くための、どうしても避け通れない災禍であり、人類自らが負うべき大きな苦難の一つではないかと思えてならない。
そして、新しい世界、地球一家を実現するには、大自然と調和し、総ての生きとし生けるものを愛し、人間もその自然の一部であり、共に生きる大切さを知ることではなかろうか。
ノーベル賞受賞者でIPS細胞の発明者でもある山中伸弥先生は、従来の考えを改め「ウイルスと戦うことでなく、いかに共生していくか」の大切さを訴えている。また、細胞生物学者の永田和宏先生は、新聞紙上で、「・・・『ウイルスは敵』と思いがちですが、ウイルスの情報を自分の遺伝子の一部としてため込んでいるのが人間という存在。人間はウイルスと共生してきた。ウイルスを撲滅しようとしても駄目で、いかに共生を図るか。ウイルスとの共生はいまだ道半ばかもしれません」と言っている。まさに至言であると思う。
古代より伝統的純粋な日本の心は、大自然の中で総てのものが同根と捉えて、それと調和し、質素かつ清潔な暮らしをしながら、常に公に奉仕することを忘れず、一国で一文化圏を形成する極めて特殊な国柄を作り上げてきた。人類は今こそ、この精神を見習って、自然と調和して、新しい世界を作らなければならないのではなかろうかと思うこの頃である。
令和2年4月26日