わたつみ友の会

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第81回精神文化講演会を振返って・・・伝統的日本の心に真の豊かさを求めて!!

去る平成18年4月16日(日)、東京港区平河町にある日本都市センターホテル大会議室において、多くの聴衆を集めて第八十一回の精神文化講演会が開催され、真の豊かさとは何かを考える一日となりました。

演題 :「共生の意味論-癌やアトピーは何故発生するのか-」
医学博士 東京医科歯科大学名誉教授 藤田 紘一郎 先生

先生には六年ぶりに二回目の登壇いただき、生体内にはアレルギーと癌を 防ぐ絶妙なバランスがあり、細菌や寄生虫が実は私達と共に生き、病 気や外 界からの刺激を防いでいること、免疫力を高めることが最も大切な ことであり、の低下が精神的衰弱をももたらすことをユーモアと巧 みな話術によって衆の 関心を引きながらスライドを使って約90分のお話でありました。

今から40年前は、アトピーや花粉症などのアレルギー疾患は日本にはほと んど無かったことを指摘され、インドネシアのカリマンタン島での子供たちの元気さと疾病のなさに着目し、体内の寄生虫がアレルギー疾患を防いでいるのではないかと考え、寄生虫から二万分子量の蛋白の抽出に成功し、動物実験の結果劇的な効果を与えることが分かったということでした。しかしながらアレルギー反応を抑える代償として癌の発生を促す結果となり、そこにはアレルギーと癌の発生を抑える絶妙な制御構造が生体内にあることが分かり、西洋医学の限界と東洋医学の総合的バランスを重視した医学の大切さを感じたと感想を述べられました。

また、皮膚常在菌が皮膚の荒れを防ぎ、他の黴菌の進入を防いでいること、正に共生していることを 示されました。さらに、生体内では毎日少ない人で二千個、多い人で七千個の癌細胞が発生していること、これを攻撃するT2キラー細胞の活性を促すためには、免疫力を高めることが大事であり、精神的ストレスをなくすこと、笑いのある生活をすることを推奨され、また毎日飲む飲み水の活性度も大切な要素であることを示されました。極端な清潔意識が感性までも衰弱させ、今日の日本の在り様はそうした清潔に対する認識の間違いが心の豊かさを失わせていると危惧をされ、これからもこうした話を沢山して行き、生き物全てに意味があること、日本人の健康に対 する誤解を改めさせて行きたいと情熱を持ってお話を締めくくられたのであります。

演題:「日本のこころ-西田幾多郎の世界―」
日本大学教授 文学博士 小坂国継 先生

先生は先ず聴衆に集中力を促され、西田の著作が読まれている割には難 しいといわれるのは、文章の難解なことや、用語の難しさ以上に、西田哲学を 理解するには意識の変革が必要なことを指摘されました。そして、西洋の哲 学や科学的態度はデカルトから始まったことを示され、二元論を中心に常に 対立的テーゼをもちだし、主観と客観、肉体と精神、自己と世界というように 対象を外に置いてこちらから物を観察する態度であることを解説され、一方、東洋的考えないしは日本的考え方は世界の中の自分という考え方から物事を対立関係で見るので はなく、自分は世界の中の自分であること、ものの内側つまり一体となって考える思想であり、西田哲学もそうした意識から展開されていることを示されました。また、日本文化は着せ替え人形のようなものであるといわれ、外来の文化を取り入れながら、洋服を着替えるようにして装ってはいるけれども、其の本質はまったく変わっていないこと、古来から培われた伝統的日本のこころ、随神の道を伝えてきていることを指摘され、親鸞や道元、本居宣 長などの実例をあげられ、日本的ないし東洋的意識のあり方を噛んで含むように丁寧に解説いただいたのであります。

また、嘗て日本を訪れた外交官が、また一般訪問者が、日本は貧しいけれど、其の貧しさを苦にして いないばかりか、礼儀正しく、高潔で極めて道徳的水準の高いこと、その美意識の高さに驚嘆していることを実例を挙げて示され、現在の日本の社会状況を大変憂えられ、戦前にはあった日本の精神的遺産の良いものを捨ててきてしまった戦後教育の間違いを指摘されたのであります。

西田の思想は、正に古来から連綿として伝えられた伝統的日本のこころの表現であることを強調さ れ、今日の日本の精神的状況は、この伝統的日本のこころ、調和のこころ、共生のこころを、自他一体感を忘れかけているところにあることを強く指摘されて約90分のお話を締めくくられたのであります。

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