講演会
第86回精神文化講演会を振返って
先ず始めに、去る3月11日に起こった東日本大震災の犠牲になられた方々に衷心よりご冥福をお祈りすると共に、避難生活を続けておられる多くの人達に謹んでお見舞い申し上げます。 さて、未曾有の大災害に見舞われ、首都東京も帰宅困難者が300万人を超えて、全てが自粛ムードの中、本会は改めて日本人の生き方、考え方を問うため会員の総力を挙げての講演会実現に力を尽くした結果、 会場を変更したものの、ほほ満席に近い方々のご来聴を戴き、心温まる講演会になりましたことを心から 御礼申し上げる次第です。
演題 : 「音楽療法で健康生活を送る」
埼玉医科大学教授
和合 治久 先生
理事長挨拶に続き、和合治久先生には「音楽療法で健康生活を送る」と題して講演を頂戴いたしました。先生はもともと人間には免疫防御機構のリンパ球や白血球があるが、昆虫にはそれが無く、その免疫防御の研究をされてこられ、その傍ら音楽が健康に及ぼす効果を研究され、音楽療法は病気の部位を診るのではなく、病人全体を診ることで、医学的見地からある特定の音楽が健康の増進に役立つことを突き止め、未病の状態である不定愁訴が交感神経の優位がもたらすもので、それが病気に移行することを、健康を維持や回復のためには副交感神経の優位を促す必要があり、クラシック音楽の中でもモーツアルトの音楽に着目し、「聴く薬」としての音楽の効用と免疫防御のリンパ球やキラーT細胞等の活性化を齎すことを示されました。
聴衆の方々も大震災の影響もあり、どこか緊張がほぐれない中、講演終了後に、ご自身でハーモニカの演奏をされ、会場も寛いだ雰囲気となり、最後に被災地へ届けとばかりハーモニカの伴奏で「千の風になって」を皆さんで合唱し講演を締めくくられた。先生の温かな配慮が身にしみた講演となりました。
演題:「不幸になる考え方」
お茶の水女子大学名誉教授
土屋 賢二 先生
次に、休憩を挟んで土屋賢二先生には「不幸になる考え方」と題して講演を頂戴いたしました。先生は、持ち前のユーモアを交えて奥様とのやり取りを話され、聴衆の笑いを誘い、すっかり聴衆の緊張がほぐれる中、人間は一面的な考えに陥りやすいことを指摘され、モノゴトは多面的に見ることが大切であり、ある人にとっては価値のないことでも他の人にとっては極めて価値のあることであり、世界は多面的であることを示され、価値の基準を何処に置くかでモノゴトの見え方が変わってくることを話されました。
そしてもう一つは、人間はモノゴトを重要視過ぎる傾向があることを指摘され、イギリス滞在の経験から、深刻な場面においてもユーモアが必要で、その場の雰囲気を和ませる事を語られました。要はしなやかな心を持ち、多面的にモノゴトを考えることが不幸にならない考え方であること示されました。問題の解決や円滑な人間関係を築く上で、しなやかな心で自由に深くモノゴトを考えることが大切であることを示唆されました。先生のユーモアを交えた、とつとつした語り口に聴衆はすっかり魅了された講演となりました。
■ 第86回精神文化講演会を振返って !!
両先生の講演を拝聴して、講演の内容はもとより、先生方の人間的魅力に触れ、やはり人間を支える力は、人を引き付けるものは知性や知識ではなく、心の中に燃え盛る情熱であり、豊かな感情であることを改めて感じることが出来ました。未曾有の震災の中、この講演会が聴衆の心に温かなぬくもりを与えることが出来たのではないかと、理事長の挨拶で、この試練が終わりの始まりであることを肝に銘じ、明日を頼まない今日一日を真剣に価値ある生き方をすることを促して講演会を締めくくりました。