講演会
第88回精神文化講演会を振り返って (古事記編纂1300年と伊勢神宮の式年遷宮を記念して!! )
4月とは思えないほど真冬並みに冷え込み、冷たい雨が降りしきる中、第88回精神文化講演会が開催されました。悪天候にもかかわらず、満員の聴衆の方々にご来場いただき、最後まで熱心にご清聴戴いた事を心から感謝申し上げます。今般の講演会は、伊勢神宮の式年遷宮を通して、私達が日本人として、知っておかなければならない日本文化の本質に迫り、その源流を発見すると共に、日常生活に密着して、健康に生きる為の食生活の在り方の実際を発見する講演となる様にと準備されました。
演題:「伊勢神宮の式年遷宮-日本文明の象徴」
國學院大學教授 古宮神社宮司 茂木 貞純 先生
茂木貞純先生には、「伊勢神宮の式年遷宮」-日本文明の象徴―と題して講演を戴いた。1300年に亘る式年遷宮の歴史を紐解き、125社の宮社を含めて神宮と称され、内宮には皇家のご祖先をお祀り申し上げ、外宮には保食神をお祀りし、それら全てが新しく甦るのが20年ごとに行われる式年遷宮であり、時代々の人々の篤い信仰と真心に支えられ、戦国時代や先の大戦の最中に於いても幾多の困難を乗り越えて来られ、私達の生活と同じく、神々のご生活の場として宮社で清々しくご生活戴くためのご遷宮がとりおこなわれて来た事、年間1500回に亘るお祭りがおこなわれ、今日まで外宮に於いて、朝夕に神々にお食事を差し上げる日別朝夕大御饌祭が執り行われ、一番のお祭りが神嘗祭(神々に新穀を差し上げる祭り)である事、内宮、外宮ともその作りは唯一神明造りのご社殿であり、稲を収蔵する倉の形をしている事などから、伊勢神宮は将に日本の生活文化の原型であり、古代其のままに今日まで連綿として伝えられ、日本人の智慧と技術が凝集したものである事等から、日本の文化は、日本国の一国で一つの文化圏を形成している世界でも希な国である事をお話され講演を締めくくられた。
伊勢神宮の営みは単なる狭い世界の出来事ではなく、人類の将来の準備としての「神と自然と人間の調和」を実現すべく世界に魁て、その実現を期して来た日本文化の象徴なのです。その意味で、日本人の本質を知り、自覚を促し、誇りと勇気を取り戻す講演となりました。
演題:「健康寿命を延ばす食事」
医学博士管理栄養士 本多 京子 先生
本多京子先生には「健康寿命を延ばす食事」と題して、生活に密着し、日本人の現在の食生活の実際を講演戴いた。今や日本の食糧の60%が外国産となる中、日本人の平均寿命は戦後驚異的な伸びを示し、世界一となったが2011年にはその座を譲り、今日では、平均寿命より健康で動ける寿命、健康寿命が大切である事を強調され、家庭で料理をするところを子供達に見せない為、食材の扱いや、調理方法が分からない人が増えている事を、聴衆を笑いに誘いながら具体例を挙げられた。また健康寿命を延ばすには、血管年齢、骨年齢、腸年齢、脳年齢の若さを保つ事が大切であり、それぞれの組織を健康に保つ為の食材と調理法の実際を、あらかじめ配布されたレジュメに副いながら、熱のこもったお話をされ、結果的には、伝統的日本食が如何に健康に良いかを、日本人の智慧を垣間見るものとなり、青魚、大豆、青菜などを上手に調理する事により、健康な生活が送れる事を話され講演を締めくくられた。
私達は、ともすれば空腹を満たす為、五感を満足させるための食事をしがちである。本多先生の言葉「食べたものは全て自分になる」という事、現在の自分の健康状態は、将に自分の食生活の良し悪しを象徴し、改めて正しい食生活の大切さに気付かされた講演となりました。
■ 第88回精神文化講演会を振り返って ―日々の感謝を捧げる営みこそ、日本文化の本質である。―
両先生の講演から、伊勢神宮の千数百年に亘る営みと、それに象徴される日本文化は、将に日本人の魂に深く刻まれた生命の本質に活力を与えるものであり、日本人の精神的栄養の源泉であることを微かに窺い知る事となったと共に、日常生活における食生活の実際もまた、私達の生物学的生命を根底から支え、健康を保つ源泉である事を知る事となりました。
伊勢神宮の日別朝夕大御饌祭と私達の毎日の食生活の在り様は、次元こそ違えども相似であり、それぞれの命脈を保つための極めて大切な日々の営みなのです。そして深い感謝が私達に真の幸せをもたらし、健康で活力ある日常生活を可能にする原点であるように思えてならない、意義深い講演会となりました。