講演会
第93回精神文化講演会を振り返って
春本番を通り越して夏を思わせる好天に恵まれた去る4月22日(日)、日本都市センタ―6階大会議室に於いて、国立天文台副台長の渡部潤一先生を迎えて、スライドを用いて宇宙生命の在り処を探る最新の成果を紹介して戴き、宇宙船地球号に乗った人間が、この宇宙のどこに位置するのか、また生命とは何か、生きるとは如何なることかを考える契機となる第93回精神文化講演会が開催されました。また講演後には第3回となる「星に願いを」をテーマに美しいヴァイオリンの二重奏のフレッシュ・コンサートが行われた。
聴衆の方々も、普段に聴くことが出来ない先生の興趣溢れる講演に熱心に聴き入り、大変有意義な講演会となりました。
演題 : 「宇宙生命は存在するか」- 天文学からのアプローチ -
国立天文台副台長 渡部 潤一 先生
「宇宙生命は存在するか」をテーマに、最新の映像を用いながら、ユーモアを交えながら講演がはじまり、私達の住むこの地球のように、生命が誕生する条件を探るべく、生命が誕生する条件として、炭素、水素、酸素などの元素がなければならない事、中でも酸素は生命が生き延びるために必要なものであり、また酸素と水素が結びついた水がある事等を挙げられ、生命の誕生と生存が可能なちょうど良い環境(太陽系における地球の位置と環境)をハビタブルゾーンとしてそうした環境を持つ惑星を探査の結果、直径10万光年と言われる銀河系約1,000億個の恒星(太陽のように自ら輝いている星)の中で約4%の恒星40億個の星に伴う惑星にその可能性がある事が明らかになった事を紹介された。しかし、その惑星を発見する事が極めて困難である事を事例で以て示され、東京から約100km離れた富士山頂に100W電球を灯して、其の周りを飛んでいるショウジョウバエを発見するようなもので現在の望遠鏡では実現できないとして、国際的協力の下、更に高性能な望遠鏡の建設が進められている事を紹介された。隣のアンドロメダ銀河(230万光年離れている)でさえ2,000億個の恒星(恒星は少なくとも数個の惑星を伴ている)があり、まして宇宙の広さが137億光年とするとその数は膨大になる事から、天文学者の間では宇宙生命の存在については肯定的な見解を持っている人が多い事を紹介された。そして、私達人間はその中で文明を興し、科学技術を発達させて来たが、その歴史はたかだか数百年であり、宇宙の歴史からすれば極めて幼い事を示唆されて講演を締めくくられた。
フレッシュ・コンサート(弦楽二重奏) - 星に願いを -
演奏 : 桐朋学園大学音楽部OG
■ 講演を振り返って -私達人間が住むこの地球は、将に宇宙のオアシスであり奇蹟の星なのである。
現代自然科学が教える所、ビッグバンによって宇宙が誕生して137億年、地球の誕生は46億年前とされ、生命誕生は数億年前であり、更に人類の誕生はたかだか数百万年としている。
渡部先生がご紹介されたように、この宇宙に生命誕生の可能性のあるハビタブルゾーンは膨大な数に上り、たとえそこに宇宙生命が存在するとしても、その距離は光の速度で数万年掛かる所にある。この地球はその中の一つに過ぎない。しかし、これほど豊かな生態系を持ち、そこで漸次進化向上して万物の霊長としてその頂点に立つ人間の存在があるこの地球は、将に奇跡の星ではなかろうか。
人間は生命(いのち)を受け、宇宙の起源や成り立ちを考え、生きる意味を考える事が出来るのは、凡そ天恩のしからしむ所である。そうであるならば、あえて地上に跼蹐して相争うことなく、伝統的日本の心が培ってきた「神と自然と人間の調和」、その調和を以て与えられた生命を完全燃焼して、地上慈化に努める事が使命ではなかろうか。
そして、夢や希望を抱いて、夜空に煌めく星々を眺めながら、遥か彼方に存在するかもしれない宇宙生命に想いを馳せてみる事も大切な事であろう。「人間よ、驕ることなかれ」と聞こえて来るような気がしてなりませんでした。