講演会
第94回精神文化講演会を振り返って
新しい元号「令和」が発表され、間もなく今上陛下が退位なされ、新天皇が誕生なされる時にあって、桜の花も散り、木々の緑が一段と濃くなって好天に恵まれた去る4月21日(日)、日本都市センターにおいて午後1時から第94回精神文化講演会が開催されました。
山村明義先生には、日本文化の根底に流れる国風(くにぶり)を尋ねて、今般の新天皇の誕生に当たり、最も重要な儀式、践祚大嘗祭に関してお話を戴いた。休憩を挟んで第4回フレッシュ・コンサートが開催され、宮内庁式部職楽師の山田文彦先生と雅楽演奏家の春日るり子さんによる麗しい雅楽の世界と舞を披露して戴き、演奏の最後に篳篥(ひちりき)と笙(しょう)の伴奏で聴衆全員が立ち上がって君が代を唱和して、新しい御代に相応しく、聴衆に深い感銘を与えて、記念すべき講演会を閉じることができました。講師、演奏者そして聴衆の方々に深い感謝を捧げます。
演題 : 「現代において八百万の神々と一体となる事とは何か?」
作家・ジャーナリスト 山村 明義 先生
理事長挨拶に次いで、熊野速玉大社宮司の上野顯(あきら)先生にご挨拶を戴き、熊野が世界遺産に登録される事で、多くの人が訪れるようになったが、熊野の心、無形の精神が失われることを危惧されている旨を吐露されました。
山村明義先生のお話が始まり、本来「即位の大礼」は京都で行われていて、本来は今上陛下から新天皇への譲位であって退位ではないと説かれ、即位なされた新天皇が真の天皇になられるための最も重要な儀式、践祚(せんそ)大嘗祭に話を進められ、践祚とはその位に就くため階段を昇る事を意味し、大嘗祭とは通常の新嘗祭(新穀を神々にささげて共に食される儀式)を一世一度の祭祀を特にそう呼ばれるとの事、その際、大嘗宮(大嘗祭が執り行われる一群の建物)の中の悠(ゆ)紀(き)殿(でん)と主(す)基(き)殿(でん)に言及され、儀式の中で天皇は神々と対座され、共食されるとの事で、その御殿に収める穀物(新穀のお米、粟)を収穫する斎田(悠紀田、主基田)を選定する儀式は青海亀の甲羅を使った亀卜(古代には卜部氏が担う)を以て行うとして、現在は甲羅の入手が難しくなっている事、また甲羅を焼く桜の木(日本固有のかばさくら、俗に犬桜)の入手も難しくなっている事等を解説され、時代の変遷と共に合理的な考えが拡大して国(くに)風(ぶり)が失われて行く事を懸念され、この大嘗祭を執り行うに当たっての多くの儀式が、心と魂を込めて準備がなされ、その本義の一つである天皇が神々に対して御(お)告(つげ)文(ぶみ)(日本国の安寧と国民の幸せ祈願される)を奏上されることで、天皇と国民(大(おお)御(み)宝(たから)、蒼(あお)人(ひと)草(くさ))の間に紐(ちゅう)帯(たい)が出来て、この祈願こそが天皇の本質であると説かれました。そして最後に、「祈りと感謝」こそが日本国の国風であると締めくくられました。
第四回フレッシュ・コンサート (和楽器の魅力を尋ねて)
演奏 : 宮内庁式部職楽部楽師 山田 文彦、 雅楽演奏家 春日 るり子
■ 講演を振り返って -「祈りと感謝」の営みこそが国風であり、日本の精神文化の本質なのである。
山村明義先生の講演から、改めて日本の精神文化の本質、国風を垣間見る事ができました。
皇室の御祖先であられる天照大御神様の御(み)杖(つえ)代(しろ)となって巡幸され、伊勢にご鎮座の功があられた倭姫命様は、吾聞くと言って「大(おお)日(や)本(まと)国は神国なり、神明の加被に依りて、国家の安全を得。国家の尊崇に依りて、神明の霊威を増す」。(倭姫命世紀から)と遺されておられます。
将に八百万の神々(その頂点に位するのが神明、即ち天照大御神様)によって日本国は守護され、陛下の祈りによってその御(み)稜(い)威(つ)(威光、威勢)が増し、国民は安心してそれぞれの日常生活を営み、それに対して感謝を申し上げるということであろう。そして、その関係性においてこそ、二千数百年に亘って皇室を中心とした一大家族体系を連ねてきた日本の真の国柄があるのだと思う。
この日本国に日本人として生まれ、生きる事の有難さが此処にあるのです。そして、今日只今も日本国民は全国の八万余の社を通じて八百万の神々と一体なのである。