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第99回精神文化講演会を振り返って

桜花も散り新緑が萌える去る令和6年4 月21 日(日)日本都市センターホテル6 階大会議室にて、千年以上の歴史を持つ五所駒瀧神社宮司の櫻井崇先生、北海道大学准教授の長谷川英祐先生を迎えて第99 回精神文化講演会が開催されました。

小野田さんとの交流の中で子供達が自然と触れ合うことの大切さを、深刻さを増す我が国の少子化問題の本質をそれぞれ解説され、我が国が抱える困難な問題を解決し、より良い社会を築く為の示唆をいただいた。

演題 :「環境教育は人生の糧となる」
五所駒瀧神社宮司 櫻井崇 先生

櫻井崇先生は、日本人は自然の中に神々を感じ、畏れと感謝を以て、なにが在るわけではないが、ほっとする空間であり、ただひたすらに目に見えないものを鎮守の杜として聖なる杜として伝えてきたことを、今日まで自然の大切さを伝えるため環境保全活動を続けてこられたことを披露された。

その契機となったのが、昭和43 年にフィリピンのルバング島から帰還した小野田少尉が、日本の子供たちの現状を憂いられて立ち上げた小野田自然塾の活動に参加したことにあったとして、その理念は、「人間は自然の一部である。生活の中で規則を守れ。目標をもって諦めないこと。」の三つがあり、自然の中で生きる知恵を身に付け、自然の偉大さを知るために五官を研ぎ澄まし、自然と触れ合うことが子供たちの成長にとって如何に大切かを身をもって感じ、その体験を通じて自然と共に生きる大切さを
教えられたと振り返られた。

そして小野田さんが最後に著した「生きる」という本の巻頭の部分の「現在の日本人にたくましさが無くなって、平和ボケとなり、緊張感がないものとなってしまった・・・」を読み上げられ、小野田自然塾で小野田さんから学んだことを、これからの子供たちに伝えて行きたいと締めくくられた。

演題 :「進化生態学からみた日本社会の未来」
北海道大学准教授 長谷川英祐 先生

長谷川英祐先生は、スライドを使って、ダーウィンの自然選択説、それぞれの生物は、生息環境でうまくやっていけるように「適応」しているという発見は画期的であったが、元々は、生物は無性生殖であって適応進化してきたはずであるが、雌雄のいる有性生殖は、高等生物の大部分に見られるごく普遍的な進化現象を説明できていないと指摘され、現実の性の進化は「有限資源環境」を考えないと説明できない現象がいくつもあり、自然選択説に疑問を投げかけられた。

そのうえで日本の近未来がどのような社会になるかを生物学的に考えると、近未来の人口はどうなるか? 経済の好循環は日本を救うか? 効率化・拡大の思想は成功するか? の三つのテーマを挙げられて、政府の異次元の少子化対策は、生物学的基礎知識であるヒトの日本個体群の個体群動態を示され、政府や経済学者がこのことを考えているとは全く思えないと指摘された。

その結果、経済の好循環は早晩成立しなくなり、韓国の例を引いて「手遅れ」を厳しく指摘、問題の本質は「子供を持つほうが幸せ」という価値観の転換と、「長い時間がかかる」ことを意識していないことであるとして、皆さん考えて下さいと締めくくられた。

講演を振り返って

経済成⻑のみを志向し、個々⼈の幸せだけを追求し、子供たちを自然から遠ざけ、⼈手不足を補うため女性を家庭から引き離した結果が、子供たちの無気力化と少子化を招いたことを深刻に受け止めなければならない。

こうした現象は日本だけに止まらず世界的傾向であり、その根底にはやはり科学技術の急速な発展に幻惑され、富の収奪だけを志向し、「人間とは何か」という命題の究明を怠り、真の生きる目的を見失った所にその本質があると思えてなりません。

小野田自然塾の目標でもあった「人間は自然の一部である」ことを閑却し、多くの賢人たちが遺したように、幸せになるのは簡単である。自然に生きればよいのである。

岡潔先生が指摘されたように、子供たちは自然の子であり、自然(大生命力)が育てるのであって、人づくりなどというのは思い上がりも甚だしいと、人類史始まって以来今日まで、また未来永劫、男女が出合い、結婚し、子供ができるのは自然である。

私たちはそのことを忘れている。一刻も早い価値観の転換と自然と共に生きることに回帰しなければならないのです。

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